#NMNの散歩道（２０）　

―柳橋―

柳橋のあたりを歩いていると、水の匂いが、記憶の奥からふっと立ち上がってくる。隅田川の流れは、今日も静かで、その静けさの中に、誰かの声が混ざっているような気がした。

橋の欄干に手を置くと、冷たい鉄の感触が、今ここにいることを教えてくれる。昔の芸者さんたちが通った道、今は静かな川沿いの散歩道になっていて、時間がゆっくりとほどけていく。

最近、体の調子が少しだけ整ってきた。朝の目覚めが軽くなって、足取りも、前よりすこしだけしなやかになった。それは、日々の積み重ねの中で、小さな粒が静かに働いてくれているからかもしれない。

川沿いのベンチに座って、風の音を聞いていると、過去と未来が、今この瞬間に重なっているような気がした。それは、誰にも見えないけれど、確かに感じられるもの。

柳橋の風は、今日もやさしかった。水面に映る空が、少しだけ秋の色をしていて、私はその色を、胸の奥にそっとしまった。

明日は、「光の粒を拾いながら」

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