#NMNの散歩道（２６）　

―雲の記憶―

その日、空は少しだけ不機嫌だった。青いはずの空に、縦に二本、横に二本、まるで誰かが空に印をつけたような雲が浮かんでいた。飛行機雲にしては低すぎて、地表から立ち上るようなその形に、私は少しだけ不安を覚えた。

「地震雲かもしれないね」隣にいた人が、スマホを見ながらつぶやいた。でも、雲は何も語らない。ただ、そこにあるだけで、私たちの心をざわつかせる。

私は、ポケットの中のNMNの小瓶を指でなぞった。それは、見えない不安に対して、自分の中に静けさを取り戻すための小さな儀式だった。雲が何かを知らせているとしても、それにどう向き合うかは、自分次第なのだと思った。

帰り道、雲は少しずつ形を変えていた。縦も横も、やがて風に流されて、ただの空の模様になっていく。それを見ていたら、不安も、記憶も、やがて風に溶けていくような気がした。

　NMNの散歩道は、そんな雲の記憶を抱えながら歩く道。空を見上げるたびに、自分の中の静けさを確かめる道。

明日は、「水の気配」

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