2025/09/11 15:31

#NMNの散歩道(29) 

―静かな午後のこと

洗濯物を干す手が止まった。風が、あの日と同じ匂いを運んできたからだ。少し焦げたような、でもどこか懐かしいような匂い。それは、戦争が始まる前の、普通の午後の匂いだった。

あの頃は、午後になると母が紅茶を淹れてくれて、私はその隣で、何気ない話をしていた。「今日の雲、ちょっと犬みたいだね」そんな言葉に、母は笑っていた。

今は、紅茶の香りも、母の笑い声も、遠くなった。避難先の小さな部屋で、私は静かに時間をやり過ごしている。窓の外には、見慣れない景色。でも、空だけは、あの頃と同じ青さを持っている。

最近、隣の部屋の老婦人がNMNを分けてくれた。「これを飲むと、少しだけ元気になるのよ」女はそう言って、笑った。その笑顔に、私は少しだけ救われた。未来なんて、今は考えられないけれど、この一粒に、ほんの少しの希望を託してみる。

失われた日常は、もう戻らないかもしれない。でも、記憶の中には、確かに存在している。母の紅茶の香りも、風に揺れる洗濯物も、そして、犬みたいな雲も。

私はそれを胸に抱いて、今日も静かに生きている。戦争が終わったら、また紅茶を淹れて、母と雲の話がしたい。それだけでいい。それだけが、今の私の願い。

明日は、「富士に想う」

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