#NMNの散歩道（３５）　―旧街道―

朝の光が、まだ眠そうな町並みにそっと触れていた。NMNをひと粒飲んでから、私は古びた街道を歩き始めた。この道は、かつて旅人たちが命をかけて通った道。今は、猫と風と、時々私だけが通る。

石畳の隙間から顔を出す草たちは、まるで昔話の続きを語りたがっているようだった。「ここで、誰かが恋をしたんだよ」「ここで、誰かが泣いたんだよ」そんな声が聞こえる気がして、私はそっと耳を澄ませた。

途中、古い茶屋の跡地に差し掛かる。木の看板はもう読めないほど風化していたけれど、そこに立つだけで、温かい湯気と甘い団子の匂いが蘇る。NMNのせいか、記憶が鮮やかすぎて、まるで夢の中にいるみたいだった。

ふと、道端に咲く白い花に目を奪われる。名前も知らないその花は、誰にも見られなくても、ちゃんと咲いていた。「誰かが見てくれるかなんて、関係ないよね」私はそう呟いて、また歩き出す。

旧街道は、過去と現在が手をつないでいる場所。NMNの力で、私はその手を少しだけ強く握ることができた気がした。

明日は、「記憶の庭にて」

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