2025/09/11 16:21

#NMNの散歩道(37) ―切手の中のレーニン―

エルミタージュの前の広場は、あの日も風が強かった。石畳の隙間から吹き上がる風が、私のスカートの裾をふわりと持ち上げて、まるで「ここにいるよ」と言っているみたいだった。

切手帳を差し出してきた男の顔は、今ではもう思い出せない。ただ、彼の手のひらの中にあった切手の束が、まるで小さな国々の記憶を詰め込んだ宝箱のように見えたことだけは、鮮明に覚えている。

その中に、レーニンの切手があった。赤い背景に、厳しい目をした彼の横顔。私はそれを見て、なぜか少し泣きそうになった。歴史の重みとか、旅の孤独とか、そういうものが一気に胸に押し寄せてきたのかもしれない。

先日、引き出しの奥からその切手帳を見つけた。ページをめくるたびに、あの広場の風の匂いが蘇ってくる。レーニンの切手は、少し色あせていたけれど、まだそこにいた。まるで「忘れないで」と言っているみたいに。

もうサンクトには行けないかもしれない。でも、あの切手がある限り、私はあの広場に立ち続けることができる。記憶の中で、風に吹かれながら。

最近、NMNを飲み始めた。老化を遅らせるとか、細胞が元気になるとか、そんな話を聞いて。でも私にとっては、あの切手帳をもう一度開くための、ちょっとした勇気のようなものかもしれない。時間を巻き戻すことはできないけれど、少しだけ、あの頃の自分に近づける気がする。

切手の中のレーニンは、今日も静かに私を見ている。

明日は、「秋の予告」

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