#NMNの散歩道（４７）　

―たまごっちの記憶―

押し入れの奥から、古いたまごっちが出てきた。黄ばんだプラスチックのボディに、擦り傷がいくつもついていて、それでも、あの頃の私の手の中にいた時間を、ちゃんと覚えているようだった。

電池を入れてみると、画面が一瞬だけ光った。でも、すぐに消えてしまった。まるで、過去が「こんにちは」と言って、すぐにまた眠ってしまったみたいだった。

その日、私はNMNを一粒飲んでから、散歩に出かけた。平成の終わりに生まれた記憶と、令和の今をつなぐような気持ちで。川沿いの道には、秋の風が吹いていて、ススキが揺れる音が、たまごっちの電子音に似ている気がした。

あの頃、私たちは小さな画面の中に命を育てていた。ごはんをあげて、トイレを流して、怒られて、笑って。それは、今思えば、未来の予行演習だったのかもしれない。NMNを飲むようになってから、身体の奥に眠っていた何かが、少しずつ目を覚ましていくのを感じる。それは、たまごっちのように、「ちゃんと見てくれてる？」と問いかけてくるような感覚だった。

帰り道、近所の子どもがスマホで何かを育てていた。画面の中のキャラクターが、ぴょんぴょん跳ねていた。私はふと笑ってしまった。時代は変わっても、育てることの意味は、きっと変わらない。

明日は、「福を招く日」

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